「たそがれどきに見つけたもの」を読みました(5月23日)
「たそがれどきに見つけたもの」はフェイスブックで高校生のクラスメイト伊智子と久しぶりにコンタクトをとることになり、彼女に会うことになった朱美の物語。かつて高校生時代、彼女は卯月君が好きだったのだが、現在の夫・多田君にラブレターをもらったことから、彼と付き合い始め彼と結婚した。可愛い娘も授かったが、1歳になる前に死んでしまった。久しぶりに会った伊智子の話によると、彼女は多田君が好きだったらしい。朱美は自分もまだ卯月君に会ってみたいという思いがあり、伊智子もやはり今でも多田君のことが好きなんだろうかと思ってしまう。
「その日、その夜」の舞台は12月21日、冬至の日。きむ子はかぼちゃのいとこ煮をつくるつもりで買い物に出かけた。きむ子は小説家である。本名は木村多賀子。名前をもじって苗字にし、高橋きむ子とペンネームをつけた。35歳で初めて単行本を上梓した。賞をもらい年収が大台に乗ったところで、東京でひとり暮らしを始めた。40歳だった。だが勢いがよかったのはわずか2,3年。その後は収入もなみの会社員クラスに落ち着き、きむ子の気持ちも仕事があるだけありがたいというところに落ち着いた。そしてこの日、きむ子は作ったかぼちゃのいとこ煮を食べることなく持病の心筋梗塞でひとり亡くなったのだった。
「末成り」はフルパートタイムで働く五十代組ふたり、四十代組ふたり、三十代と二十代の若手組ふたりの話なのだが、40代のゼンコ姐さん(本名・内田善子)は真偽も疑わしい過去の色恋沙汰の話でみんなを盛り上げていた。
「ホール・ニュー・ワールド」はコンビニでアルバイトとして働く53歳の智子が深夜勤務をやるようになり、朴青年と二人で休憩することに。そして、だんだんと若い朴君に気持ちが引き寄せられる智子の心の内が描かれている。
「たそがれどきに見つけたもの」 朝倉かすみ著 講談社 2016年2月22日発行 1500円+税