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「活版印刷三日月堂 海からの手紙」を読みました(10月17日)

「活版印刷三日月堂 海からの手紙」を読みました(10月17日)_d0021786_22314023.jpgこの本は「活版印刷三日月堂 星たちの栞」の続編で、4つの話からなっています。最初は「ちょうちょうの朗読会」で、図書館司書の小穂は川越のカルチャーセンターで朗読講座を受けている。というのも彼女は人と話すのが苦手で、子どもへの読み聞かせが何よりの苦手だった。そんな彼女が、同じ朗読講座に通う3人とともにカフェでの朗読会をやることになった。そしてその朗読会のプログラムを活版印刷の三日月堂にお願いすることになる。

二つ目は「あわゆきのあと」。6年生の広太は、ある日、父から「実は…、広太には、お姉さんがいたんだ」ということを聞かされる。生まれてすぐに、三日で亡くなったという。そしてその遺骨が今もうちに置いてあり、今度のひいじいちゃんの13回忌の時に一緒にお墓に入れてもらおうと思っている父が言った。姉の名前は「あわゆき」だった。三日月堂の弓子さんに、その話をして、人は死んでも、あとに残った人たちの中で生きているということを聞かされ、広太はあわゆきの名刺を作って、ひいおじいちゃんの13回忌に来た人たちに配ったのだった。

三つ目は「海からの手紙」。昌代は一人暮らしで、自分がだれにとっても何でもないようなものになっていくようで、そういうものにこの世にいる意味があるのか、という虚しさみたいなものを時々感じていた。祖父の13回忌の法事の時に広太からもらった「あわゆき」の名刺をきっかけに、川越に住む昌代は活版印刷三日月堂へ行く。そして弓子と意気投合し、弓子に勧められ、もうやめていた銅版画を再開し、彼女との合作で豆本を作り、古書店で開かれる「豆本マーケット」に出すことにした。

四つ目は「われらの西部劇」で、慎一は会社で心臓発作を起こし、救急車で病院に運ばれ、1か月近く入院していた。退院してからもしばらく家で静養。ようやく会社に戻ったものの、閑職に回された。結局いたたまれなくなり、会社を辞めた。会社の社宅も出なければならなくなり、川越の実家に家族を連れて帰ることにした。父親はすでに30年前に亡くなっており、母が一人いるだけだった。妻の明美はフルタイムで働くようになった。長男の祐也は高校受験を控えた中三の夏に引っ越したことを不満に思っていた。妹のあすかは田舎の方が一軒家で広いのでいいと言っていた。長男の祐也との関係がぎくしゃくしていたが、慎一も以前亡くなった父に対して同じように反発していた。だが古書店で開かれていた「豆本マーケット」で昌代と弓子が作った「貝殻」と言うタイトルの本を買って、「印刷 三日月堂」と書かれているのを見つけて驚く。慎一の父は出版社に勤めていたが慎一が物心ついた時にはもう出版社を辞め、フリーになっていた。父は映画好きで映画の紹介文を書くのが主な仕事だった。特に好きだったのが西部劇だ。その父も慎一が大学を卒業する日に心臓発作で突然死んでしまった。父が「ウエスタン」という同人雑誌を作り、そこに西部劇に対するコラムを連載していた。そして父がなくなる1年ほど前、雑誌の創刊15周年を記念して父のコラムをまとめた本を作ることになっていて、三日月堂に頼んでいた。そして三日月堂にその版が残っていたのだった。だが最終号の原稿が半分しかなくて、本にできずに止まったままだったのだ。果たして父のコラムをまとめた本はできるのか。

ほのぼのとした内容の小説でした。

「活版印刷三日月堂 海からの手紙」 ほしおさなえ著 ポプラ社 2017年2月5日発行 680円+税
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by irkutsk | 2017-10-17 05:28 | | Comments(0)