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「アジア辺境論」を読みました(10月23日)

「アジア辺境論」を読みました(10月23日)_d0021786_13321684.jpg「はじめに」の中で内田樹氏は次のように言っています。「国力の大切な指標の一つは「失敗から立ち直るときの復元力」。もう一つは「未来について、広々とした、向日的なヴィジョンを提示できる力」です」。そして彼は「日本はヴィジョンを提示する力がきわだって衰えている。日本がアメリカの属国であって、主権国家ではない限り自前の世界戦略を語る日は来ないだろう」と指摘しています。

独裁制については、「歴史から我々が学ぶべきことは、民主主義というのはよほど警戒心を持って扱わないと、いとも簡単に独裁制に移行するということです」と言っている。ドイツにしても、イタリアにしても独裁制は民主主義制度の中から生まれたのであるから。

また「外交、内政の政治環境が非常に複雑になり、変数が増えすぎて制御が困難になり、何が起きているのか、どうすればいいのかについて国民ひとりひとりが、自分の頭では考えることができなくなったという状態で、「敵はこいつらだ。こいつらを排除しろ。こいつらを排除すればすべてうまくゆく」というシンプルな政策を提示する政治勢力に人々は磁石に引き付けられるように引き付けられる。

「重要な政策決定においては、早押しクイズではないので判断をせかせる必要はなく、考えうるすべてのリスクとベネフィットをじっくり考量して、適切な解を選び取ればいい。「拙速」は有害無益です」と指摘している。

そして今の日本は、独裁制に移行しつつあると警鐘を鳴らしている。「これは別にどこかに邪悪な「マニビュレイター」がいて、後ろで糸を操っていて、独裁制を仕掛けたわけじゃありません。日本人が幼児化したのです。共和制を管理運営できるほどの大人の絶対数がそろわなくなったのです。幼児の眼には独裁性が実によくできたシステムに見える。効率的な政治、スピード感、突破力など。今の日本に必要なのは民主制の成熟、政治的知性を備えた市民を育てることだ」と。

そして「おわりに」で姜尚中氏はアジアの辺境である日本、韓国、台湾の連携をすすめ、ポストアメリカの時代が来つつある現在、そこに賭けてみる価値があるのではないかと言っていた。

読み応えのある一冊でした。今の日本の状況を的確に分析し、日本が今後進むべき道を示しており、ぜひおすすめの本です。

第1章「リベラルの限界」
第2章「ニッチナ辺境国家が結ぶ新しいアジア主義の可能性」
第3章「アジアの連携を妨げる「確執」をどう乗り越えるか」
第4章「不穏な日本の行く末」

「アジア辺境論」 内田樹、姜尚中著 集英社文庫 2017年8月24日発行 740円+税
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by irkutsk | 2017-10-23 06:30 | | Comments(0)