人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ロシアとMacと日本語 irkutsk.exblog.jp

関心のあるいろんなこと書きます


by irkutsk
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

「日本はなぜ「戦争ができる国」になったのか」を読みました(1月23日)

「日本はなぜ「戦争ができる国」になったのか」を読みました(1月23日)_d0021786_10373852.jpg東京の上空に巨大な米軍専用空域があるのを知っていましたか。東京、神奈川、埼玉、栃木、群馬、山梨、長野、静岡の一都八県の上空をカバーする広大な空間が、米軍の完全な支配下にあり、日本の民間機はそこを飛ぶことはできないのです。この空域は米軍横田基地によって管理されているため「横田空域」と呼ばれています。羽田や成田を飛び立ち西へ向かう飛行機はこの空域を避けて急旋回、急上昇を強いられているのです。

さらに、米軍関係者は出入国審査を受けることなく自由に横田基地から出入国できるのです。横田基地だけではなく、六本木ヘリポート、横須賀基地など日本中の米軍基地からまるで国境がないかのように自由に出入りできるのです。この事実はまさに日本はアメリカの一部であるという現実を物語っています。

サンフランシスコ平和条約と安保条約が結ばれる1年前、トルーマン大統領は「日本中のどこにでも、必要な期間、必要なだけの軍隊を置く権利を獲得する」という方針を決定しています。

そして1950年、10月に米軍が作った旧安保条約の原案には次のように書かれていたのです。「この協定(=旧日米安保条約)が有効なあいだは、日本政府は陸軍・海軍・空軍は創設しない。ただし、アメリカ政府の決定に、完全に従属する軍隊を創設する場合は例外とする」。「戦争の脅威が生じたと米軍司令官が判断したときは、すべての日本の軍隊は、沿岸警備隊も含めて、アメリカ政府によって任命された最高司令官の統一指揮権のもとにおかれる」と書かれていたのです。完全にアメリカに従属し、世界中のあらゆる場所で、戦争が必要と米軍が判断したら、その指揮下に入って戦う自衛隊」が今、現実のものとなろうとしているのです。

第二次大戦後、日本を占領したアメリカのマッカーサープランでは、文字通り日本を「非武装中立」にし、沖縄を含む太平洋の主要な島々に国連軍を配置することによって守ることになっていた。また1950年3月ごろにはNATOの太平洋版として「太平洋協定」が想定されていました。メンバーはアメリカ、カナダ、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、日本。

この時期の日本の独立に向けた安全保障の構想には、「日本のための安全保障」と「日本に対する(周辺諸国の)安全保障」という二つの側面がありました。

当時のアメリカの軍部は、米軍基地が使えなくなる可能性のある日本の独立、つまり平和条約の締結には絶対反対の立場でした。そこで考え出されたのが、「政治と経済については日本との間に「正常化協定」を結ぶが、軍事面では占領体制をそのまま継続する」という方針でした。

マッカーサーは、日本占領において夢見ていた「国連軍構想」、つまり個別国家は戦争する権利を持たないとする新しい時代の集団安全保障構想を持っていました。そしてそれができる前からつぶすことを決めていた人物がダレスだったのです。

もともと占領軍の位置づけは、ポツダム宣言にもとづいて日本を占領し、徹底的にその軍事力を破壊して上で、二度とアメリカや世界に危害を加えない民主的な国につくりかえる、その目的が達成されたときは、平和条約を結んで、直ちに撤退するというものでした。

ところがその後、朝鮮戦争が勃発し、日本は国連軍のようなアメリカとの間に安保条約を結び、国連軍基地のような米軍基地を米軍に提供し、国連軍のような在日米軍の戦争に協力することになったのです。

朝鮮国連軍においては国連の関与が一切排除された形で、米軍の統一指揮権が確立されました。朝鮮戦争に伴い日本国内の米軍は朝鮮へ送られ、マッカーサーはその穴埋めに7万5000人の警察予備隊の創設、海上保安庁の8000人の増員を指示したのでした。これで日本国憲法9条2項は事実上破棄されました。

有名なインチョン上陸作戦と同じ時期に東側のウォンサン上陸作戦も計画されており、そのために必要だった機雷除去のために海上保安庁の掃海艇部隊が派遣され、軍事作戦に参加しています。そして1隻の掃海艇が機雷に触れ、爆発、沈没し、死者1名、負傷者18名の犠牲者を出しています。

戦後史の原点に立ち戻ると、日本を武装解除し、二度とアメリカや世界に対して武力を行使することのないようにするという計画であったが、朝鮮戦争の勃発によって、日本を再軍備させ、その指揮権は米軍が握るという現在の体制が作られていったのは日本国民にとっては大きな不幸であり、禍でした。しかし、それを支え、推進した日本の政治家がいたということも忘れてはならなりません。

「戦後レジームからの脱却」と言いながら、戦後レジームにどっぷりと浸り、多くの国民が米軍の犠牲になっても、何ら手助けをしてくれない現在の日本政府に対してNOを突きつける必要があります。

忘れかけていた、戦後日本の再出発と、朝鮮戦争による実質的な憲法9条第2項の破棄、再軍備、そしてその指揮権が有事には米軍の統一指揮権の下におかれるという日本の現実に気づかせてくれた貴重な本でした。

「日本はなぜ「戦争ができる国」になったのか」 矢部宏治著 集英社インターナショナル 2016年5月31日発行 1200円+税
名前
URL
削除用パスワード
by irkutsk | 2018-01-23 10:36 | | Comments(0)