「忖度バカ」を読みました(2月11日)
昨年、10月8日に名古屋駅前の「ウインクあいち」で益川先生と対談をされたときの話も書かれてあり、友人と聞きに行ったのを思い出し、「あー、そういえばこんな話もしていたな」と親近感を感じました。
さて内容ですが、本の中から少しだけ紹介しておきたいと思います。
「序章」では日本に蔓延する「忖度症候群」について書かれています。その典型的な症状は「あなたのため」「会社のため」「国のため」と、相手のことを思いやる形をとりながら、実は相手の行動や考えをコントロールしようとしたり、見返りを期待して、しがみつこうとします。
症状は「視野狭窄」(「見たいもの以外は見なくなります」)、「記憶障害」(忖度の対象者や自分自身に都合の悪いことを選択的に、時には意識的に忘れてしまいます)、「認知のゆがみ」、「言葉のすり替え」、「事実の隠ぺい」、「レッテル貼り」、「過剰適応」(自分の主張ができなくなり、周囲の人々の顔色うかがうようになってきます)、「共依存」(「あなたのため」という自己犠牲的なふるまいは、実は相手をコントロールしようという動機にもとづいているので、本当の意味で相手のためにはならないことがほとんど)。
病気が進行すると、忖度という先回りの服従によって、一時的に成功し、他者や組織、権力と一体感を得たような錯覚に陥りますが、他者や組織、権力側の采配ひとつで、失脚することもままあります。
忖度症候群が発生しやすい社会とは、反グローバル主義、排外主義、保護主義経済……と、急速に内向きに閉じようとしている世界。見えない壁を築いて、自分を守っているのか。それとも壁の中に囚われているのか。壁は、忖度症候群がはびこるぼくたちの社会の、まるで心象風景のようです。日本でのヘイトスピーチが広がり、テレビ番組では、日本を自画自賛する内容のものが受けたりしています。こうした日本礼賛は、戦争に向かう時代にもありました。
「忖度症候群」の症状で特に気になるのは、権力や組織にしがみつこうとすることです。その背景には、自分を認めてもらいたいという欲求が垣間見えます。自己肯定感が低く、努力してきたのに報われていないと感じている可能性があります。先行きの見えない不安、のしかかる閉塞感をひしひしと感じながら、お互いの意識に過敏に反応してしまう「忖度症候群」。ぼくたちは、この警告をどのようにとらえ、生かしていくべきなのでしょか。
「忖度バカ」 鎌田實著 小学館新書 2017年12月4日発行 800円+税