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「いつまでも白い羽根」を読みました(4月7日)

「いつまでも白い羽根」を読みました(4月7日)_d0021786_10572098.jpg2009年、藤岡陽子さんのデビュー作です。彼女自身、慈恵看護専門学校卒業生で看護資格を持っており、自分の経験を物語にしたのかもしれませんね。

主人公の木崎瑠美は大学に行きたかったのだが、高2の時に父親が体調を崩し、仕事をやめてしまい、お父さんの不調がいつまで続くかわからないから、大学受験は諦めてほしいと母親に言われた。部活のアーチェリー部もやめた。

高校を卒業し、4月から看護学校に通い始めたが、瑠美の心の中では大学へ行きたいという希望が残っていた。看護学校で友達になったのは山田千夏で、彼女のおかげで大変な看護学校の実習も何とか乗り越えられたのだった。幼い二人の子どもがいる主婦の佐伯典子やクラス一の美人藤野藤香など周りの人たちとの葛藤や、それぞれが抱える事情などなかなか読み応えのある内容である。

実習では肝臓がんの末期患者・千田に孫に田上を渡してくれと頼まれる。また彼の食道静脈瘤が破裂して、血まみれになって最期を迎える現場に立ち会うことになった。預かった手紙を孫に渡したというのが、あとで問題になり教員に叱られた。

最期の実習で担当したのは小児科の八木友香ちゃんという8歳の女の子だった。友香は4度の手術歴があり地方の病院から今年の4月に転院してきている。母親は週に1回、日曜日に会いに来てくれるがそれ以外は一人で過ごさなければならない。彼女の病名は脳腫瘍だった。

3年間の看護学校の生活の中でいろんなことがあったが、卒業できたのは100人中、62人だった。山田千夏は最後の実習で担当していた生後10か月の赤ん坊(心臓病で入院していた)が、ウイルスに感染したのか発熱が続いて、時々呼吸困難に陥っていた。千夏は看護記録に「呼吸が数秒停止」と書いたのだが、先生と担当の看護師は「呼吸が停止」というのは万一両親が読んだら大事になりかねないので、訂正するように千夏に言った。だが千夏は事実を曲げることはできないと拒否し、それなら実習放棄で退学になると言われたが、千夏は自分の正しさを貫いて退学したのだった。二人の子持ちの佐伯典子は夫と離婚し、子どもを連れて実家へ帰っていった。クラス一の美人藤野藤香は卒業を前にして自動車事故で亡くなった。

この本の中でよかったと思った箇所。山田千夏が瑠美に言った言葉。「ねえ、瑠美。人の好き嫌いってなんだと思う? 特別に自分に何かされたわけじゃないのに、どこかいけすかない人がいたり、逆に親切にされたわけじゃないのに好きだなと思う人がいたり、そういうのなんだと思う? それはね生きる姿勢なんだと思うんだ。その人の生きる姿勢が好きか嫌いか。それがその人を好きになるか嫌いになるかなんだよ。」

看護師を目指した学生たちが看護現場で経験し、感じた様々なことが書かれている最高の本です。

今日(4月7日)23:40から東海テレビでドラマ化された「いつまでも白い羽根」が放映されます。

「いつまでも白い羽根」 藤岡陽子著 光文社 2009年6月25日 1900円+税
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by irkutsk | 2018-04-07 10:57 | | Comments(0)