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「手のひらの音符」を読みました(4月20日)

「手のひらの音符」を読みました(4月20日)_d0021786_9261360.jpgデザイナーの水樹は、自社が服飾業から撤退することを知らされる。45歳独身、何よりも愛してきた仕事なのに……。途方に暮れる水樹のもとに中高の同級生・憲吾から、恩師の入院を知らせる電話が。お見舞いへの帰省する最中、懐かしい記憶が甦る。幼馴染の三兄弟、とりわけ思いあっていた信也のこと。<あの頃>が、水樹に新たな力を与えてくれる―。人生に迷うすべての人に贈る物語!
(本の裏表紙に書かれていたあらすじ)より

現在と、子ども時代が交互に描かれており、子ども時代の経験は、わたしの子ども時代とも共通している。近所の人がお互いに助け合い、よその家の子供の面倒を見てくれていた。この小説の中で、水樹が育った環境も競輪場近くの4階建ての市営住宅の2階で水樹、水樹の家は両親と兄の4人家族。1階には同級生の信也と兄の正浩、弟の悠人と彼らの両親が住んでいた。保育園の頃から信也とは一緒で、親のお迎えが遅く、いつも最後に二人が残っていた。信也の弟・悠人は少し変わった子供で、人の言うことを全く受けつけないところや強すぎるこだわりを持っていた、例えば「今どうしても砂遊びをしたい」と思ってしまうと、砂遊びをさせてやるまで泣き続ける。またてんかんの持病があった。彼らの父親は競輪選手だったが、肝臓を悪くして入院していた。

水樹の父親は競輪狂いのタクシー運転手。のちにバブル景気の頃、不動産屋に転職し、地上げをやっていた。

憲吾から入院していると連絡をもらった遠子先生は、高校時代の美術の先生だったが、水樹が就職するというのを、自分のやりたいことをするようにと粘り強く説得し、彼女をデザイナーへの道へ進ませてくれた先生だった。

不幸な家庭にはいろいろな不幸が次々とやって来る。しかし、その中で力強く生きていく若者の姿が感動的に描かれている作品である。

「手のひらの音符」 藤岡陽子著 新潮文庫 2016年9月1日発行 630円+税
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by irkutsk | 2018-04-20 05:25 | | Comments(0)