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「羊と鋼の森」を読みました(4月23日)

「羊と鋼の森」を読みました(4月23日)_d0021786_20394151.jpg高校生の時、体育館のピアノの調律に来た板鳥が調律するのに立ち会い、外村は森の匂いを感じた。秋の夜の。秋といっても9月上旬。夜といってもまだ入り口の、湿度の低い、晴れた夕方の午後6時頃。夜になるのを待って活動を始める山の生きものたちが、すぐその辺りで、息を潜めている気配がある。静かであたたかな、深さを含んだ音。そういう音がピアノからこぼれてくる。

外村は板鳥の元を訪れ、弟子にしてくれと頼みこむが、弟子を取るような分際ではないと断られ、調律師養成のための専門学校に行くことを勧められる。卒業後、北海道の故郷近くの町、板鳥さんのいる楽器店に調律師として就職した。

初めて調律に行ったのは、入社して5か月が過ぎた秋の初めだった。柳さんが顧客宅へ調律に行くのに同行させてもらった。マンションの4階にあるそのうちには、一番小さいグランドピアノがあった。双子の姉妹、和音と由仁が弾くピアノだった。調律が終わり、学校から帰ってきた和音が弾いてみる。ちょっと弾いてみて「これでいいです」と答え、「じゃあ、これで」と柳が言いかけた時、「もうすぐ妹が帰ってくるはずなので、少しだけ待ってもらえますか」と言う。双子で顔がそっくりな姉妹なのに、姉が弾いたのとは全く違うピアノだった。妹のピアノは色彩に溢れていた。

ピアノの調律の世界がこんなにもわかりやすく、ストーリー性を持たせて描かれているのには驚いた。ピアノに関しては何も知らないが、それでも調律師と演奏者、そしてそれを聞く聴衆が満足できる音を、様々な条件に応じて調整していくのは大変なことだと思う。

調律師の世界をちょっと見ることができて、不思議な満足感を覚えました。

「羊と鋼の森」 宮下名都著 文春文庫 2018年2月10日発行 650円+税
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by irkutsk | 2018-04-23 05:38 | | Comments(0)