「羊と鋼の森」を読みました(4月23日)
外村は板鳥の元を訪れ、弟子にしてくれと頼みこむが、弟子を取るような分際ではないと断られ、調律師養成のための専門学校に行くことを勧められる。卒業後、北海道の故郷近くの町、板鳥さんのいる楽器店に調律師として就職した。
初めて調律に行ったのは、入社して5か月が過ぎた秋の初めだった。柳さんが顧客宅へ調律に行くのに同行させてもらった。マンションの4階にあるそのうちには、一番小さいグランドピアノがあった。双子の姉妹、和音と由仁が弾くピアノだった。調律が終わり、学校から帰ってきた和音が弾いてみる。ちょっと弾いてみて「これでいいです」と答え、「じゃあ、これで」と柳が言いかけた時、「もうすぐ妹が帰ってくるはずなので、少しだけ待ってもらえますか」と言う。双子で顔がそっくりな姉妹なのに、姉が弾いたのとは全く違うピアノだった。妹のピアノは色彩に溢れていた。
ピアノの調律の世界がこんなにもわかりやすく、ストーリー性を持たせて描かれているのには驚いた。ピアノに関しては何も知らないが、それでも調律師と演奏者、そしてそれを聞く聴衆が満足できる音を、様々な条件に応じて調整していくのは大変なことだと思う。
調律師の世界をちょっと見ることができて、不思議な満足感を覚えました。
「羊と鋼の森」 宮下名都著 文春文庫 2018年2月10日発行 650円+税