「闇から届く命」を読みました(4月30日)
登場する人物の描写がすごい。能力がなく、金儲けと、病院の体面、自分と身内の保身のことしか考えていない院長。野原院長がこの病院を開院したのは12年前。大学病院の産婦人科にいた院長が、同じ病院の当時43歳の草間と32歳の巣川を伴って開院したのだ。院長と師長の巣川は長年の不倫関係にあると教えてくれたのは草間である。
草間は夫が体を壊して働けなくなったので、彼女が30代の半ばから家族を養っている。大学病院の1.5倍の給料をもらえるというので、この病院の開業の時から働いている。息子が4人もいて、末っ子が大学を卒業するまではやめられないといつもぼやいている。ベッド数が30もあるのに、常勤の助産師は4人しかいない。夜勤のできるパートも限られてるし、忙しすぎて切れてしまいそう草間は言っていた。
後輩の戸田理央は都会の生活にあこがれて東京へ出てきて、マンションで一人暮らしをしている。
時々病院に現れる、院長の次男・野原俊高は神経内科のクリニックを開業している。人当たりがよく、誰に対しても気さくに話しかけてくるから、スタッフにも評判がいい。背はさほど高くないが、ジム通いで維持している引き締まった体型も人気の理由だ。理央によると彼のクリニックは院長である父と妻の実家が出資して開業できたのだという。
新しい命が生まれる産婦人科病院で繰り広げられる人間関係の葛藤や、出生前検査で胎児の異常の確立が高いと言われたときの両親の対応、それをケアする助産師など産婦人科病院ならではの様々な問題が描かれている。
だがもう一つ、この本では後輩・戸田理央をめぐって、事件が起こる。ついつい話に引き込まれ、先のストーリー展開が待ちきれなく3日で読んでしまった。
「闇から届く命」 藤岡陽子著 実業之日本社 2015年2月15日発行 1600円+税