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「おしょりん」を読みました(8月20日)

「おしょりん」を読みました(8月20日)_d0021786_11151450.jpg明治33年4月、足羽郡木田村一帯が火事だという場面から小説は始まる。羽二重の下請けをやっていた五左衛門は取引先の機屋がみんな焼けてしまい、五左衛門のうちも立ち行かなくなった。

増永家の嫁・むめは「もうやめなければならない。幼い恋を引きずって生きることを」と自分に言い聞かせるのだった。明治28年9月、麻生津村角原の親戚の葬式に両親と妹たちは出かけて、むめ一人うちに残っていた。来年3月に麻生村生野の増永家に嫁ぐむめは縁起の悪い葬式に出なくてもいいと、一人残されていたのである。留守宅に増永家から人が訪ねてきた。大野で買い付けた醤油や年賀用の酒などを持って来たという。むめは婚約相手の五左衛門だと思い、「角原の村を案内してください。この村で一番美しい場所を見せてもらえますか」という男の願いを聞いて、文珠山のふもとにある滝まで案内した。

翌年、結納の時に会ったのは、昨年会った人と違うのにショックを受ける。この前会ったのは五左衛門の弟の幸八だったのだ。

五左衛門と結婚し、つい、たかの、みどりの3姉妹を生み、明治37年、6年ぶりに幸八が帰ってきた。明治33年の大火では福井の織物業者の多くが傾いていた。幸八は16歳で家を出て、東京の帽子屋で住み込みで働き、歯科医院の助手もした。そして彼はこの村に持ち帰る産業を探していたのだった。

明治36年4月に「内国勧業博覧会」が大阪で開かれ、22のメガネ会社からの出展があったが、舶来品には全く及ばず、これなら後追いできると考えたのだった。そして兄・五左衛門にメガネ枠つくりを勧めるのだった。

なかなか弟の提案に首を縦に振らない五左衛門だったが…。

今でも、鯖江はメガネ枠づくりの産地として有名だがそのルーツを知ることができる一冊である。ちなみに本書の題名の「おしょりん」というのは雪が降り積もってそれが凍って固まり、雪の上を自由に歩いて行ける状態のことを言うそうだ。

「おしょりん」 藤岡陽子著 ポプラ社 2016年2月15日発行 1600円+税
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by irkutsk | 2018-08-20 05:55 | | Comments(0)