「中国に勝つ 日本の大戦略」を読みました(10月4日)
しかしその後、中国の反日統一共同戦線の無力化を図るために、安倍は何を行ったか。2013年9月、ロシアのクリミア併合で救われることになった。世界のGDPの53%を占めるアメリカ、EU、日本が対ロ経済制裁で一体化した。だが中国は石油、ガスの安定供給(中国の天然ガスの25%はロシアから)のためにロシア側についた。
さらに2013年10月、中国は「一帯一路構想」を打ち出し、AIIBを設立した。2015年3月、イギリスがアメリカの制止を無視してAIIBに参加した。それを見てフランス、ドイツ、イタリア、韓国、ロシア、ブラジル、エジプト、スウェーデンなどアメリカとの同盟国57か国が参加した。日本の財務官僚は「あれはただの発展途上国の集まり。アメリカが釘を刺しているので先進国は相手にしない」という誤った情報を官邸にあげていた。だが日本だけはアメリカを裏切らなかったということで、結果オーライということになった。
筆者は、尖閣だけではなく沖縄の領有権も日本にはないとする中国の発言、それに基づいた様々な行動を見る中で、中国は日本を孤立させ、尖閣のみならず沖縄も自国の領土にしようとしているとしていると主張している。そのために中国は、日本を孤立させるために反日統一共同戦線を構築しようとしてきた。日本は反日統一共同戦線を作らせないために、日米同盟を強化し、ロシア、韓国とも良好な関係を築くことが重要だと言っている。
第二次世界大戦では、日本は満州国の独立をめぐって国際連盟を脱退し、世界から孤立してしまった。それゆえに開戦当初からあの戦争には勝てる見込みは全くなかった。中国の孫氏の兵法に「最上の戦いは敵の謀略を読んで無力化すること、その次は敵の同盟、友好関係を断ち切って孤立させること、それができなければ敵と戦うことになるが、城攻めは最後の手段である」というのがある。中国はアメリカ、ロシア、韓国と一体化して日本をつぶすという戦略であるから、日本は中国の狙いと反対のことをすればよいのだと言う。
複雑な世界情勢を、事実をもとにわかりやすく説明してくれる本である。
「中国に勝つ 日本の大戦略」 北野幸伯著 育鵬社 2017年12月11日発行 1600円+税