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「わが心のジェニファー」を読みました(10月26日)

「わが心のジェニファー」を読みました(10月26日)_d0021786_2033171.jpg日本びいきの恋人ジェニファーから、結婚を承諾する条件として日本への一人旅を命じられたアメリカ人青年ラリー。ニューヨーク育ちの彼は両親が早くに離婚し、どちらもラリーを引き取らなかったので、ラリーは祖父母に育てられた。祖父は太平洋戦争を戦い、口癖は「日本人は油断のならない奴ら」。

成田空港に着いて、温水シャワートイレに驚く。シャトルを宇宙に飛ばす技術と用便のたびに肛門を洗浄する技術とは、いったいどちらが人類にとっての偉大な発明なのかと考えた。

リムジンバスに乗ってしばらくするとラリーは日本の交通ルールに気が付いた。ファストレーンを走る車は、追い越しを終えるとすぐに左の車線に戻るのである。しかも、車間距離は十分でちっとも無理はないのに、いちいちハザードランプを点滅させて「ありがとう」の意思表示をする。むろんクラクションなんて、誰も鳴らさない。ルールというよりマナーなのだろう。

バスが渋滞に巻き込まれて予定よりも15分遅れて新宿に到着した。運転手はその15分の遅れを詫びていた。この国では、結果的に予定が狂えばその原因いかんにかかわらず、サービスの提供者が責任を感じて謝らなければならないのだ。

ラリーは翌日、新幹線で京都へ向かったが、東京駅のホームで入ってきた新幹線の乗客が下りると、清掃員たちが乗り込みわずか一、二分間でゴミを集め、テーブルを拭き、シートの進行方向を逆転させ、背もたれのカバーを替えたのに驚いた。

京都では旅館に泊まり、懐石料理を堪能する。そして大阪、別府、釧路と旅を続けるのだが、京都の清水寺で着物姿の若い女性と知り合ったり、別府では温泉で年を取ったオーストラリア人と知り合いになったり、東京に戻って台風を経験し、台風の中で知り中学生の少年ジョージ(日本人)と知り合いになり、その母親と危うく関係を持ちそうになったり。

外国人が見た日本、日本人の外国人、とくにアメリカ人に対する態度などがおもしろく書かれている。

「わが心のジェニファー」 浅田次郎著 小学館文庫 2018年10月10日発行 750円+税
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by irkutsk | 2018-10-26 20:31 | | Comments(0)