2018年 02月 11日 ( 1 )

d0021786_538947.jpg森友、加計学園問題で官僚の忖度が問題になり、「忖度」というあまり使われてこなかった言葉が新聞紙面をにぎわすことになり、流行語にもなりました。本書は本来「忖度」とはどういうものか。現在、官僚が政治家に対して行っている「忖度」とはどういうものか。「忖度」をキーワードに人間の生き方にも言及した、一冊である。

昨年、10月8日に名古屋駅前の「ウインクあいち」で益川先生と対談をされたときの話も書かれてあり、友人と聞きに行ったのを思い出し、「あー、そういえばこんな話もしていたな」と親近感を感じました。

さて内容ですが、本の中から少しだけ紹介しておきたいと思います。
「序章」では日本に蔓延する「忖度症候群」について書かれています。その典型的な症状は「あなたのため」「会社のため」「国のため」と、相手のことを思いやる形をとりながら、実は相手の行動や考えをコントロールしようとしたり、見返りを期待して、しがみつこうとします。

症状は「視野狭窄」(「見たいもの以外は見なくなります」)、「記憶障害」(忖度の対象者や自分自身に都合の悪いことを選択的に、時には意識的に忘れてしまいます)、「認知のゆがみ」、「言葉のすり替え」、「事実の隠ぺい」、「レッテル貼り」、「過剰適応」(自分の主張ができなくなり、周囲の人々の顔色うかがうようになってきます)、「共依存」(「あなたのため」という自己犠牲的なふるまいは、実は相手をコントロールしようという動機にもとづいているので、本当の意味で相手のためにはならないことがほとんど)。

病気が進行すると、忖度という先回りの服従によって、一時的に成功し、他者や組織、権力と一体感を得たような錯覚に陥りますが、他者や組織、権力側の采配ひとつで、失脚することもままあります。

忖度症候群が発生しやすい社会とは、反グローバル主義、排外主義、保護主義経済……と、急速に内向きに閉じようとしている世界。見えない壁を築いて、自分を守っているのか。それとも壁の中に囚われているのか。壁は、忖度症候群がはびこるぼくたちの社会の、まるで心象風景のようです。日本でのヘイトスピーチが広がり、テレビ番組では、日本を自画自賛する内容のものが受けたりしています。こうした日本礼賛は、戦争に向かう時代にもありました。

「忖度症候群」の症状で特に気になるのは、権力や組織にしがみつこうとすることです。その背景には、自分を認めてもらいたいという欲求が垣間見えます。自己肯定感が低く、努力してきたのに報われていないと感じている可能性があります。先行きの見えない不安、のしかかる閉塞感をひしひしと感じながら、お互いの意識に過敏に反応してしまう「忖度症候群」。ぼくたちは、この警告をどのようにとらえ、生かしていくべきなのでしょか。

「忖度バカ」 鎌田實著 小学館新書 2017年12月4日発行 800円+税
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by irkutsk | 2018-02-11 05:38 | | Comments(0)

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