ミッドランドスクエアシネマへ「コットンテール」を見に行きました。
映画は兼三郎が市場でタコを買おうとするところから始まる。生きているタコを買おうとするが、それはお得意様の注文のタコなので売れないと言われ、茹でタコを万引きする。そして混んだ電車の中を、体を横にするでもなく、横に立っている人にわざとぶつかりながら進んでいく。そして行きつけのすし屋に行って、盗んだタコを渡して寿司を作ってもらう。ビールも頼み、コップもふたつもらい、ビールを注ぎ、今は亡き妻・明子と乾杯する。
盛大な妻・明子の葬儀の後、兼三郎は息子の慧とともに住職に呼ばれ、明子からの手紙を渡される。その手紙には自分の遺骨は彼女が愛したイギリスのウィンダミア湖に散骨してほしいというものだった。兼三郎は長らく疎遠にしていた息子・慧とその妻・さつき、そして4歳の孫エミとイギリスへ向かう。
しかし、お互いにわだかまりを抱えた兼三郎と慧はことあるごとに衝突する。ロンドンに着いたその日に、時刻表を見て午後の列車があるからこれに乗って行こうと言い出し、慧は明日の朝の列車をもう取ってあるから今日はゆっくり休もうという。だが兼三郎は聞き入れず、一人で列車に乗って出かけてしまう。しかも列車を乗り間違えて、戻ろうとするが最終列車も出てしまう。駅前の自転車を盗んであてもなく走りはじめるが、雨が降りだし、大きな木の下で一夜を過ごす。そして翌朝、近くにあった家に行き、ウィンダミア湖へ行く道を聞くが、ここからは遠いし、電車の駅も近くにはないと言われる。その家には父親と娘が住んでいて、最近母親が亡くなったのだという。このうちの親子に親切にしてもらい、息子の慧とも連絡が取れ、親切な親子にウィンダミア湖まで車で送ってもらった。
ウィンダミア湖で息子たちと再会したが、その場所は明子が持っていた写真の場所ではなかった。まわりの人たちに写真を見せ、写真に写っている場所がどこにあるかを聞き、その場所へと行くが、もうすでに夜になり、激しい雨も降ってきた。慧は、場所は分かったんだから明日出直して来ようというが、兼三郎は雨の中、遺骨の入った紅茶缶をもって岸辺に行こうとする。
そして翌日、みんなは昨日来た場所に来て、車を停めひとりで行くからと兼三郎は遺骨の入った紅茶缶を持って行くが、途中の木の下に座り込んで明子が生きていた頃のことを思い出していた。そこへ3人がやって来て、一緒に岸辺へと向かい写真の場所にあき子の遺骨を湖に撒いた。
ホテルに帰ってからも、兼三郎は相変わらず慧には打ち解けず、自分の世界にこもっている。そんな父親の姿に、慧は「父さんの世界におれも入れてくれよ」と言う。
イギリスでの散骨の場所を求めて旅行するシーンの間に、過去の兼三郎と明子の思い出が挿入されていた。知り合った頃、すし屋でデートし、明子の胸元にあるウサギのついたネックレスが気になった兼三郎。病院の前の喫茶店で、認知症と診断されたと告白されたときの兼三郎。あてのない「だいじょうぶだよ」を繰り返すばかり。そしてひとり先に店を出て行ってしまう。
認知症がひどくなり寝たきりになっていた明子の誕生日。もうすぐ慧たち家族が来るからと起こそうとすると、便を漏らしていた。すぐに風呂場に連れて行って洗おうとするが、そこへ慧たち家族がやってくる。なんでも自分一人でやろうとする兼三郎。
最後に写真の湖で明子の骨を散骨した後、小高い丘を登るとたくさんのウサギがいた。
母さんには「おれが助けてやるから」と言ったけど、助けてやれなかったと息子の慧に告白する。慧は父親が苦しむ母の姿を見かねて母親を殺したのではないかと疑っていた。
明日はわが身と思える映画だった。元気に年を重ねることができれば問題ないが、病気になり長く家族に面倒をかけることになると本人も家族もつらいものだと思う。
「コットンテール」 2023年日本・イギリス合作 94分 監督:パトリック・ディキンソン 出演:リリー・フランキー、木村多江、錦戸亮、高梨臨、イーファ・ハインズ / キアラン・ハインズ